江戸木目込マイスターの塚田進さん
今回は、すみだマイスターの塚田進(詠春)氏が運営する工房ショップ「塚田工房」及び併設の小さな博物館「江戸木目込人形博物館」をご紹介します。ちいさな硝子の本の博物館の館長、村松が工房にお邪魔してお話を伺ってきました。
木目込み作業を施す塚田さん
塚田さんは、高校卒業と同時に人形師としても尊敬する叔父の、5代目 名川 春山の内弟子として入門。当時は進学を考えていましたが、「勉強なんざー公園のベンチの上でもできる」という一言に心動かされたそうです。厳しい修業時代を経て昭和48年、現在の地に独立。
平成9年に東京都伝統工芸士認定、平成12年に通商産業大臣伝統工芸士認定、平成20年には東京都より東京マイスターに認定されています。また、今年10月3日には「東京都功労者表彰 文化功労」を受賞されました。
コンクールなどでも数々の受賞歴を持ち、ぱっと見た感じはいかにも怖そうな、職人気質の親方。
ですが、お話をしていると、とても温かい人柄に魅了されてしまいます。
仕事がお休みの日は、お孫さんと遊んだり、ドライブをするのが楽しみだそうです。
昔の作品の貴重な原型木型
木地に胡粉を何度も塗り重ねる
見学には予約が必要ですが、工房内の「江戸木目込人形博物館」では木目込人形が流行する基礎を作ったとされる4代目名川春山氏の貴重な作品や、人形の原型・制作道具・材料など約50点が展示されています。
もとは京都で発達し、江戸に伝わり独自に発展した江戸木目込人形の歴史、成型方法などについても塚田さん自ら、丁寧に解説してくれます。
眉毛は鶴、ヒゲは亀を表現している
筆者がイベントで体験した手毬ストラップと猿の人形
月に数回開催の人形教室のほか、毬・ひょうたんのストラップなど木目込の小物が制作できる一日体験も修学旅行生などに人気です。こちらも予約が必要ですが,区のイベントなどで参加できることもありますのでぜひチェックしてみてください。私も個人的に、産業会館で行われたイベントで、手毬ストラップと今年の干支の申の人形を体験しましたが、桐の粉を練って作られた土台の溝に、布をはめ込む作業がとても楽しかったです。
来年に向けて、新たにだるまさんの顔に絵付けもできる木目込み体験も準備中だそうです。楽しみですね!
「これからの時代にあったものを作っていくことが大切」という塚田さん。
人形は好みがあったり、値段もすぐに買えるようなものではないので、それに代わるものを伝統の製法や、作れる形に制約がある中で日々模索しているそうです。「難しくもあるが、やりがいがある。」そんな中で生まれてきたのが、すみだモダンにも認定され、まち処でも購入可能な「Kimekomi 絹絵 北斎文様」と「スマホスタンド」。日常の生活で使えるように工夫されています。また、現代の住宅でも飾りやすいように工夫がされた「小梅雛」も、すみだモダンに認定されています。そのほか、かわいらしい表情の干支の人形も毎年人気です。
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ひとつひとつ、衣装の違うお雛様
人形の多くは雛人形。お孫さん用以外にも、幼い時に買ってもらえなかった60代前後の女性が、、ご自身のために購入されるケースも増えているとのこと。塚田工房で制作される雛人形の衣装にはすべて、明治までに作られた本物の江戸ちりめんの古布を使用しています。最近は入手が難しく、遠くの古道具市などに探しに行かれることもあるそうです。きれいな模様がちょうど衣装の形に合うように裁断をするので、使える部分も限られるそう。一見、すこし地味なようにも見えますが、一つ一つ違った模様、使い込むほどに味わい深くなる布の質感。子供の時にはわからなくても、大人になってはじめて良さがわかる。よいものを作りたいというこだわりと、やさしい思いが込められた世界で一つのお雛様です。
小さめサイズの招き猫もおすすめ
「せっかく、職人さんがそこかしこにいるものづくりの街なのだから、区内の小中学生にもっと親しんでもらえる環境づくりをしていきたい、そして地元のものづくりの交流を盛んにしていきたい。」と熱く語っていただきました。
小さな博物館 江戸木目込人形博物館
マイスター 塚田進
工房ショップ 塚田工房
取材:ちいさな硝子の本の博物館 村松